
2025年、さらなる進化に向けてyukiyamaは着実に進化を続けてきた。60万ダウンロードを突破し、業界における存在感を地道に高めてきたyukiyamaアプリは、持続可能な成長モデルの確立に向けて挑戦を続けている。
今回は、そのyukiyamaを仲間と二人でスタートし、少しずつ今までになかった価値観を作りつつある代表の岡本圭司に”yukiyamaの現状とこれから”について編集部が直接インタビューを行った。

スキー場とユーザー、双方の課題解決を目指して
――あらためて、yukiyamaが目指していることを教えてください。
「自分たちが最も大切にしているのは、二つの価値提供を同時に実現することです。一つは『ユーザーのスキー・スノーボードの楽しみ方の幅を広げること』、もう一つは『多忙なスキー場スタッフの業務負担をITで軽減すること』。この二つをyukiyamaで両立させたいと思い、ここまでやってきました。」
――スキー場の業務負担をITで軽減することというと具体的にどのような取り組みになるのでしょうか?
「例えば、スキー場単体にとって自社アプリの開発・運用は大きな負担になります。一般的なアプリ開発だけで1000万円以上、毎年の年間の保守費用でも数百万円規模の金額が必要となり、これを一つのスキー場で運営・持続するのは、400以上のスキーリゾートが存在するこの日本では現実的ではありません。そこで私たちは、複数のスキー場で共通して使えるプラットフォームを提供し、負担を軽減するビジネスモデルを提案しています。これはユーザーにとってもスキー場単体のアプリより、1つのアプリで全国のスキー場でスマートに楽しめるという大きなメリットであるとも考えています。
アプリはスキー場ごとのカスタマイズも可能で、APIを通じてデジタルサイネージやウェブサイトとの情報連携で、情報管理の一元化を実現し、デジタルクーポンやPUSH通知等でユーザにオンラインのアプローチを行い集客を図る事も出来ます。そして、それを年間10万円から50万円程度の価格帯でサービス提供し、私たちがその頂いたサービス料で継続してアプリを保守、開発する事で、スキー場の負担を大きく減らすことができています。」

広告モデルを再定義する
――収益面では少し課題があると伺いました
「はい。正直赤字です。笑
為替の影響や物価高騰で、サーバー費用が従来の倍以上になるなど、予想以上のコスト増に直面しています。ただ、私たちはユーザーやスキー場、企業に過度な負担をかけない形でのサービス提供にこだわっています」
特徴的なのは、その広告モデルだ。一般的なアプリでは無料ユーザーに広告を表示するが、yukiyamaでは全く違うアプローチを取っている。
「私たちはこの数年オンラインイベントを積極的に取り組んでいます。他のアプリでもあるようなユーザービリティを下げる広告表示みたいなことはあまりしたくないんです。自分達はスキーヤー、スノ―ボーダーなので、スタイルにこだわりたいというか。。例えばBurton社とコラボレーションしたグループライディングイベントの企画でいうと、ユーザーがイベントに参加して、グループで滑る事を楽しむこと自体が広告効果になる。皆で楽しく滑って欲しいというBurton社の想いもアプリユーザーにも伝わり、全ての人がハッピーになると考えます。単なる広告露出ではなく、みんなが楽しめる形で企業やブランド、商品を知ってもらいたいんです。」


yukiyamaアプリが2024年にできたこと
――2024年はどのような1年でしたか?
「2024年は大きく三つの成果がありました。一つは、アプリのサーバーを大幅に強化した事により、安定したサービス提供に前進した事。
そして二つ目がデータサイエンスの基盤構築です。アプリユーザーの属性データだけでなく、スキー場内での行動データや評価が直接スキー場にフィードバックされ、どういった属性の人たちが来ていて満足しているのか、どのコースをどの時間に使っているのかなど、今まで取る事の出来なかったyukiyamaならではの詳細なデータ分析の提供が可能になりました。また、スタートアップの段階ではありますがユーザーに対してもyukiyama webでデータサイエンスのデータベースをもとに、スキー場の情報を届け、さらに情報発信の機能を加えることで、より包括的なプラットフォームとしての第一歩を踏み出せました。今後はこの領域においても、様々な所にちりばめられた業界の情報をキュレーションされたコンテンツにしていき、業界全ての人が損をしないようなものにしていきたいと考えています。」
参考:yukiyamaのデータサイエンスの取り組み
・【第一回】スノーリゾートのDXに挑む、ユキヤマとユニリタのデータサイエンスの取り組み
・【第二回】データサイエンスで拡がるDXの可能性と業界関係者からの期待
・【第三回】スキー場の経営改善を促すデータの価値とは丨ユキヤマ×ユニリタ社長対談
外部との協業で広がる可能性
「そして、最後の一つが外部企業との協業です。アソビューとのチケット連携や提供、日本で唯一の地上波スノーボード番組である『NO MATTER BOARD』とのコンテンツ配信、POWとの環境保全活動推進など、さまざまな形で協業を進めています。私たちが目指しているのは、スキー場の情報発信や運営をより効率的にすることはもちろん、世の中に数多く存在する魅力的なサービスを業界に組み合わせたりすることで、ユーザーとスキー場、そして関わるブランドや企業など、すべての関係者にとってメリットがある形を実現し、業界全体の課題解決に貢献することです。無駄を削り、効率化を図ることが、この縮小傾向にあるスキー業界において、今最も必要であり、私たちの使命だと感じています。」

2025年に向けて
――今年の展望を教えてください。
「2025年は、アプリの開発チームとの連携が少しずつ良くなってきたこともあり、アプリの全体的な質の向上や、よりコアなユーザ向けの有料サポーター機能の強化を目指しています。膨らむサーバー費用を負担して頂いているyukiyamaサポーターの存在は本当に大きなものです。
そして、もう一つがスキー場との関係性をより深めていきたいと考えています。単なるアプリ提供企業ではなく、スキー場のIT化や安全管理(セーフティライド)、温暖化へのアクション、本質的なサステナブル化、さらには新たな流行の創出など、包括的なソリューションを提供できる存在になりたい。そのためには、スキー場の方々にyukiyamaのサービス内容や可能性をより深く理解していただき、一緒に新しい価値を作っていく関係性を築いていきたいと思います。
「繰り返しにはなりますが、スキー・スノーボード業界全体を盛り上げていくためには、一つのスキー場や企業では実現できないことでも、みんなで力を合わせれば可能になることがたくさんあります。その架け橋として、yukiyamaは今後も進化を続けていきたいです」