
スタンスやセッティングについて、ライダーそれぞれの考え方を特集する STANCE. LAB LIBRARY。 今回は、小学校教員からライダーへと転身した異色の経歴を持つ Konomi さんに話を伺いました。長年のライダー活動で積み上げた自身の経験と小学校教員時代に培ったティーチング力を掛け合わせたプライベートレッスンは、現在高い支持を集めています。
ライダーとしての技術的な視点と、レッスンプロとしての実践的な考え方を併せ持ち、その両方を行き来しながら語られるスタンス論は、これまでの STANCE. LAB とは少し異なる切り口でした。

人に教えることが、スタンスを変えていった
今回は、数値や角度の話だけではなく、ライフスタイルや立場の変化が、スタンスやセッティングの考え方にどう影響してきたのか。その視点で話を伺いました。
Konomiさんは、現在プライベートレッスンをメインに活動している中で、滑ること以上に人に教えることが自身の軸になってきたと言います。
「今は、自分が上手くなるより、私が何かアドバイスすることで誰かが学んで、誰かが上手くなる方が楽しいんです。小学校の先生もそうですけど、自分よりも、自分が教えた人が上手くなるのが仕事をしていて嬉しかったなって、今振り返ると思います」
実は、この価値観の変化が、スノーボードのスタンスにも表れていました。

「自分のスタンス」より「相手のスタンス」
近頃は数値的に決まったスタンスやセッティングがないそうです。
「自分が滑ることベースというより、レッスンでお客さんに教えることがメインになったので、スタンスを決める基準を相手に委ねて、お客さんの情報を集めたいという気持ちが強くなったんです」
レッスンに来る人のジャンルや滑り方はさまざま。前振りの人、ダックの人、グラトリ中心の人、それぞれ条件が違います。
「一つの技に対して、このアングルだったらこう、このスタンスだったらこう、って全部理解した上で説明したいんですよね。なので気づいたら、スタンスやセッティングを固定するよりも、お客さんに合わせて試行錯誤を続けるスタイルに変わっていました。そんな感じで毎回全く違うセッティングになるので、固定の数値がなくなった感じです」

セッティングの数値への意識
「セッティングの数値に関しては、自分のためというより人に教えるために見ています」
自分が滑るときは感覚でセットアップするそうですが、レッスンでは、お客さんのスタンスを把握するために、角度や幅といった数値を入念に確認します。
「レッスンの時は、『前足何度ですか?』『スタンス幅じゃどれくらいですか?』って必ず聞きます。その数値に合わせて、自分も同じセッティングにすることが多いですね。基準はわたしのスタンスではなくて、お客さんの数値が基準です」
「自分の感覚だけで『こうだと思います』って言うより、同じセッティングで滑ったほうが、その人が何を感じているか分かりやすいじゃないですか。とはいえ、この角度が正解、みたいな考え方はしないようにしていて。あくまで、その人の体の使い方とかを見ながら最適なセッティングを導き出していけたらと思って、滑りや体の使い方を入念に見ています」
ライダーとして自分の滑りだけに集中していた時との違い
現役ライダーとして滑っていた頃は、数値を意識する場面は少なかったと言います。
「その頃は、正直、角度がいくつとかはあまり気にしていなかったです。感覚的に調子がいい場所に合わせていました。ちなみにその頃、STANCERでは前0°、後ろ0°のような数値が出てました。計測するときは左右平等じゃないと気持ち悪さを感じていました。実際のアングルは、前+12°,後ろ-3°が一番多かったですね」
人に教える立場になったことで、セッティングや数値の意味合いが変わっていったそうです。

体の使い方を「部位」で分解して伝える
Konomiさんのレッスンの大きな特徴は、体の使い方を一つの動きとして捉えるのではなく、部位ごとに分解して伝えている点です。
「例えば、何かトリックを練習しようとなったら、足という大きな括りだけ意識する人が多いと思うんですけど、足だけだと結構限界があるんです。足首、膝、股関節、腕、肘まで、全部に感覚を向けてあげると、体のコントロールが一気にしやすくなるよって伝えています」
特に、ノーリーのグラトリやバックノーズといった動きでは、踏む場所だけでなく、体のどこに力が入っているかを細かく確認するそうです。
「ノーリーも、ただ前に体重を乗せるだけだと潰れちゃうんですよね。足の裏のどこで踏んでいるかまで分解して、どのタイミングで体を動かしているかを見ます。一度で正解は出ないので、全部で踏んでみたり、回数を分けたりして、『今どこが一番ハマった?』『今はどこが動かしにくかった?』って聞きながら進めています」
感覚任せに見える動きも、実際には体の使い方の積み重ねだと考えています。
「できる・できないで終わらせるというより、今はどこまで分かっているか、どこから分からなくなっているかを一緒に整理する感じですね」
こうした伝え方は、小学校教員時代の経験とも重なります。
「学校でも、いきなり答えを教えるより、どこでつまずいているかを細かく見ていくじゃないですか。それと同じ感覚でやっています」

スタンスとセッティングは、性格や人生が反映されるもの
インタビューの終盤で話題に上がったのは、スタンスやセッティングが、その人の性格や立場の変化を映し出すものではないか、という点でした。
Konomiさん自身、ライダーとして滑っていた頃と、レッスンを行うようになった今とでは、スタンスに向ける視点が大きく変わったと振り返ります。
「昔は、自分がどうやったら上手くなるか、自分がどう動きやすいか、そこしか見てなかったと思います。当時のスタンスやセッティングは、あくまで自分のためのものでした。自分だけができていれば、それで良かったんですよね。人に教えることも前提じゃなかったですし」
しかし、レッスンを行う立場になったことで、意識が変わっていきました。
「今は、自分が上手くなるより、人が上手くなっていく方が嬉しいって思いながら、スノーボードしてます。先にも話しましたが、自分の中で『これが私のスタンスです』っていう形はなくて、その時その時で変わっている感じです。相手に合わせて考えたいし、その日の状況や体の状態に合わせて変えたい。今は、そのほうが自然だなと思っています」
ライダーとしての立場から、教える側の立場へ。その変化とともに、Konomiさんのスタンスやセッティングも、少しずつ形を変えてきました。スノーボードのセッティングは、単なる角度や数値の話ではなく、その人が何を大切にして滑っているのかを映すものなのかもしれません。

