「カービングとグラトリの融合で自分だけの表現を」菅谷佑之介が語るスタンスの哲学 | STANCE. LAB LIBRARY Vol.7

「カービングとグラトリの融合で自分だけの表現を」菅谷佑之介が語るスタンスの哲学 | STANCE. LAB LIBRARY Vol.7

yukiyama

2025.03.11

スタンスにまつわる話を特集するSTANCE. LAB LIBRARY、第7回は、プロスノーボーダーの菅谷佑之介さん(以下、菅谷さん)にお話を伺いました。菅谷さんはカービングとグラトリを融合させた独自のスタイルで活躍。クリエイターとしても映像制作や板のデザイン・設計まで幅広く活動しています。そんな菅谷さんにスタンスへのこだわりや哲学を語っていただきました。

カービングとグラトリを融合させた独自のスタイル

「カテゴリで分けるとするなら、スタイルはいわゆる最近だとラントリって言われているジャンルになるとは思います。ただ、ラントリというよりは、もう少しカービングに重きを置いたテクニカルっぽいカービングをしながらも、滑りの間にしっかりとしたグラトリを入れていくというスタイルが独特だと思うので、それで僕のこと認知してもらえてる気がしています」

───滑り手としての活動以外も精力的にやられていると伺いました

「撮影や映像制作の活動をしています。具体的にはスキー場や、メーカーさんのプロモーション撮影をしたりがメインになります。また、『SPREAD SNOWBOARDS』の全体の板の設計だったり、自分のモデルのデザインや設計もやっていますね」

現在のセッティングについて

菅谷さんの現在のスタンスは、前足が27度、後ろ足が18度という前振りのセッティング。このセッティングに至るまで、様々な試行錯誤があったそうです。

「最初はカービングがやりたくて、先輩のアングルを真似して、確か、最初は前足が24で後ろが0だったんですよね。その後グラトリもするようになって、アングルをダックスタンスに変えたりしました。しかし、やっぱりカービングの見た目だったりスタイルを意識したときに後ろ足は前に振りたかったので、今のスタンス角度『前:27度、後ろ:18度』に落ち着いたような感じになりますね。15度ではなく18度です。この3度もフィーリングとしては結構重要なんです」

スタンス角度による見え方のこだわり

菅谷さんがスタンスを考える上で重視しているのは、カービングの際の美しいシルエットです。

「映像で見た時に、かっこいいシルエットをどうしても出したいんです。そうなるとやっぱりスタンスアングルも見え方に影響してきます。最近はダックスタンスのカービングとかも流行っていますが、僕が出したいスタイルを考えると、シルエット的にやっぱり後ろ足を板の上に残しておきたいんですよね」

───なるほど、そう考えるとどのようなスタンス角度が理想になってくるのでしょうか

「そう考えると、前・後ろともに前に振りたいんですね。その答えが、お話した、前足が27度で後ろ足が18度になるんですけど、そうすると綺麗に腰が前を向いて後ろ足がしっかりと板からはみ出ないように収まるので、カービングシルエットがすごく綺麗に見えます。横から見た時もすごくかっこいいんですよね」

スタンスとトリックの関係性

菅谷さんは、スタンスが技の出し方にも大きく影響すると考えています。

「メインスタンスのトリックとスイッチスタンスでやるトリックを完全に分けて考えています。グラトリ好きの人のほとんどは、左右対称に同じ技をやろうと考えていると思いますが、僕はそうは考えていません。例えば、メインスタンスに関しては(菅谷さんはグーフィースタンス)ノーズが長いので、板の反発が必要なトリックをチョイスします。大きく飛ぶタイプのノーリースピンですね。逆にスイッチの時はノーズが短くなるので、高回転のノーリー720などの技をチョイスします。実はそうやってトリックの出し方を考えています」

STANCERについて

「2年前か3年前かな、初めてSTANCERを使ったんですよ。かなり半信半疑で使ったんですけど、時間をかけて見つけた自分のベストなスタンスと、全く同じ数字が出てきて、逆に悔しかった記憶があります。一瞬で正しい数値を出してくるのがすごいなと。そういった意味でもすごく印象に残っています」

───最近あらためてSTANCERをやってくださったと伺いました

「はい。カービング設定のダックスタンスで『前30度、後ろ−9度』という結果が出ました。先述の前振りとはまた違ったダックスタンスですが、この角度とほぼ同じセッティングを過去に試していて、気に入っているセッティングの数値だったのでさすがだなと、あらためて思いました」

スタンスとセッティングの哲学と工夫

「スタンスをいつも考えるときにどういう滑りをしたいかという方向から考えていくんですけど、そうすると体に無理があるようなセッティングの方に寄っていってしまうんです。でも、体のパフォーマンスありきの競技なので、最終的には体のパフォーマンスを一番発揮できるポイントが大事だと思っています。つまり、物理的に一番いいパフォーマンスができるポイントと体のパフォーマンスが一番発揮できるポイントが交わるところに調整していくことが重要ですよね」

───スタンスの自由度を増やすためにプレートも設計開発していると伺いました

「実はバインディングとスノーボードの間に入れるプレートを作っています。なぜ作っているかというと、アングルの角度の自由度を増やすことが目的です。カービング好きの中では『ドラグしないために前に振る』という考え方があるんですが、そうするとどうしてもできるアングルが限られてしまうんですよね。僕が設計しているプレートを入れれば、板を思いっきり立ててもドラグしづらくなるので、より自分の滑りたいスタイルのアングルに近づけることができます」

菅谷佑之介が考えるスタンスの本質

菅谷さんにとってのスタンスの本質は、物理的に理想的なポイントと自分の体の限界を調整し、パフォーマンスを最大限に引き出せるセッティングを見つけること。そして、そのセッティングをベースに、様々な技や表現を追求していくことです。

「自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるセッティングを見つけること。それが僕にとってのスタンスの本質ですね」