経験と感覚を重視してきた太田宜孝のスタンスとは丨STANCE.LAB LIBRARY Vol.2

経験と感覚を重視してきた太田宜孝のスタンスとは丨STANCE.LAB LIBRARY Vol.2

yukiyama

2024.03.12

毎月、スタンスにまつわる話を特集するSTANCE.LAB LIBRARY。連載2回目は、様々なジャンル・フィールドを滑り尽くしてきたunfudge代表のプロスノーボーダー、太田宜孝さん(以下:太田さん)に自身のスタンスについて語っていただきました。

太田宜孝さん

ジャンルの枠に収まらないスノーボード

みなさんが頭に思い浮かぶことは大体全部やってきました。若い頃はプロになりたいと思っていたので、コンペティターとしてハープパイプやジャンプをやっていましたし、その後はフリーランやバックカントリーなどにフィールドを広げました。現在48歳で16歳の頃からスノーボードをはじめたので、約30年以上やっていることになりますね。

若い頃と今で変化したスタンスの捉え方

今と昔でスタンスの捉え方は変わりました。例えば現役でバリバリやっていた頃は「攻撃的なスタンス」で今は「いたわりのスタンス」です。やはり、体はどうしても衰えてたり、痛みが出たりしますよね。今はスタンスでそういうことを補っているようなイメージです。

「攻撃のスタンス」と「いわたりのスタンス」

例えば、攻撃のスタンスはバックカントリーでジャンプして、スイッチでランディングをしたいからダックスタンスにするという感じです。スタンスのセッティングに理由がある場合です。この場合だと「絶対着地で立ちたい」という意志と理由があります。いたわりのスタンスは、膝に負担がかからないようにするみたいなイメージですね。

───そういったスタンスは、感覚で見つけていくものなのでしょうか?

ぼくたちの若い頃は、参考になる基準みたいなものは何もなかったので、自分たちで試行錯誤をしながら見つけました。1日中、滑りながらセッティングを触ってましたよ。誰かのセッティングを参考にするって言っても、曖昧なことをみんな話してるので信じてなかったです。逆に今は、全員がいろいろな参考値を観ることができるので、数値を信じ込んで逆に迷ったりすることがあるんじゃないかと思います。ワンシーズンずっといじっていると、感覚的にスタンスの最適解は見つかるんですけどね。

現在のスタンスについて

最近、スタンスは狭くなりましたね。昔ほどスピードを出して滑ることもなくなったし、急斜面をドカーンと滑ることもなくなってきたので。いわゆる「いたわりのスタンス」ですよね。数値的には、だいたい前足は+24とか+27くらいで、後ろ足が±0に落ち着いてます。膝が悪かったり、股関節を痛めたことがあったりするので、怪我の影響は少なからずありますね。

一番大切にしている感覚は「違和感」

スノーボードの上に立った時に感じる違和感が嫌いです。本当に少しでも違和感があると許せません。

───その違和感というのはどのくらいの違和感なのでしょうか?

かなり細かいと思います。例えば、靴下に小さい毛玉の玉があったら気になりますよね。そのくらいの小さな違和感です。細かいかもしれないですが、その小さな違和感をセッティングでちゃんと改善します。「年間通して今年はこのスタンス」みたいな考え方はナンセンスだと思いますし、感覚優先なので、嫌だなと思ったらすぐに数値を変更していきます。その辺りは柔軟です。

自身のスクールでもスタンスは重要項目

フリーライディングスクールセッションでは、スタンスのアドバイスもします。具体的には、足回り全般の話になったりもするのですが「全くあなたの力で曲げられてないですよ」みたいなことも言います。憧れのライダーのセッティングに無理やり合わせて、その人に合ってないということもあったりするので、少し滑って「みんなでスタンスを考え直してみよう」みたいなことをやったりしますね。滑りを良くするためのアプローチとして、そういった提案もちょっと含めています。

スクールの様子

───なるほど、やっぱりスタンスって重要なんですね

いやー、すごく重要ですね。極端な例え話ですけど、車を運転していて、シートがグニャグニャで、自分の体に全然合ってなければ長距離の運転はしんどいですよね。それと一緒で、ちゃんと体に合ったものにしていきましょうということです。

STANCERについて

一度やってみたときの記憶だと、スタンスで性格占いされて「無謀に突っ込む人」みたいなことを言われた覚えがあります笑

武藤コメント(とにかく可動域がめちゃくちゃ広いです。可動域広いってことは、立っている時とか歩いている時とか運動する時に、地面のいろんな位置に足を置いて動けているということになります。これだけ可動域が広いとバランスの制御範囲も必然的に広くなります。つまり、どんな位置で立っても自分がバランス取れる位置にはなります。素晴らしいですね)

20代の頃、ハーフパイプでハイクアップをするぼくの歩き姿が好きだって女の子に言われたことがあります。足跡がモデルっぽく縦に揃ってたらしいです。

太田さんにとってのスタンス

感覚ですね。全て、自分が今までやってきた経験です。30年くらいスノーボードをやってるとSTANCERで出てくるデータと、感覚でやってる今の数値に大きな差はないと思うんですよ。自分のアライメントの調整値を把握するみたいな感覚で、データは参考にしたいと思います。