その準備体操、根拠はありますか?SAFETY RIDE体操を接骨院の院長に聞いてみた

その準備体操、根拠はありますか?SAFETY RIDE体操を接骨院の院長に聞いてみた

yukiyama

2026.03.17

「滑る前にちょっとストレッチしたほうがいいのは知ってる。でも、正直どれが効くのかよくわからない」そんな声を、ゲレンデでよく聞きます。

yukiyamaが昨年12月に公開した「SAFETY RIDE体操」は、スキー・スノーボードの滑走前に約2分でできるウォームアップ動画です。年齢やジャンル、レベルを問わず、すべてのウィンタースポーツ愛好者が安全に、そして快適に滑るために必要な動きを網羅した構成になっています。

手本動画はこちら

今回はその体操の動きひとつひとつに、どんな医学的・運動学的な意味があるのかを専門家に解説してもらいました。

お話を聞いたのは、振り付けを担当した蓮根かとう接骨院の院長であり、自身もスノーボーダーとして雪山に立ち続ける柔道整復師の加藤尚さん。

25年以上の臨床経験を持ち、スポーツ障害から足専門外来まで幅広く対応されています。

スキー・スノーボードのケガは「筋力不足」だけじゃない

まず押さえておきたいのが、スキー・スノーボードに多いケガの傾向です。

全国スキー安全対策協議会のスキー場傷害報告書(2017–2025)によると、スキーでは膝関節周囲の傷害、スノーボードでは肩・手首など上肢の傷害が比較的多く、その傾向はこの10年以上大きく変わっていません。また、受傷が多い時間帯は午前中や午後の疲労が出始める時間帯に集中しており、準備不足や身体の冷えが一因であることが示唆されています。

これらのケガに対して「筋力をつければ防げる」と思いがちですが、加藤さんはもう少し複雑な背景を指摘します。

「ケガの原因は、単純な筋力不足だけではないことが多いです。股関節や胸椎の可動性が足りていなかったり、上半身と下半身がうまく連動できていなかったり、重心移動への反応が遅れたりといった、いわゆる『身体の使い方』の問題が絡んでいるケースも少なくありません」

SAFETY RIDE体操は、こうした視点から設計されています。

なぜ「滑走前に体を整える」ことが重要なのか

スキー・スノーボードは、低温環境・不整地・スピード変化という要素が重なるスポーツです。そのため、滑走前の身体の状態が、その日の動きや安全性に直接影響します。

一般的にウォームアップには、こんな生理学的効果があるとされています。

・身体温度の上昇

・関節可動域の一時的な拡大

・神経・筋系の反応性の向上

・運動への注意・集中の切り替え

ただし、「準備体操をすれば必ずケガを防げる」という強いエビデンスは、現在のスポーツ医学でも限定的です。

「『リスクを下げる可能性を高める行為』として位置づけるのが、現時点では誠実な説明だと思っています。SAFETY RIDE体操も、その前提のうえで設計しました。やれば絶対に大丈夫という話ではなく、滑り出す前に自分の身体の状態を確認して、動きやすい状態に整える。その積み重ねが、無理な動作や判断ミスを減らしていくという考え方です」(加藤さん)

体操の3つの核心部位

SAFETY RIDE体操は、主に3つの部位を重点的にアプローチする構成になっています。

① 背骨・体幹(ロールダウン/胸椎回旋)

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ターン動作では、上半身で方向づけをしながら視線を安定させる必要があります。その動きの中心にあるのが「胸椎(背骨の胸の部分)」の可動性です。

「胸椎の動きが乏しいと、その分を腰や肩が代わりに担おうとします。これが腰痛や肩のトラブルにつながりやすい。ロールダウンや胸椎回旋の動きは、背骨全体の連動性を高めて、自然な回旋動作を引き出すことが目的です」

ターンのたびに腰に違和感を感じる方は、実は胸椎の硬さが原因であることも多いそうです。

② 股関節・骨盤(エイミングヒップ/フロッギー/ニーグラブ)

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スキー・スノーボードにおいて股関節は、荷重移動・衝撃吸収・下肢の安定性のすべてに関わる、いわば動きの要です。

「股関節の動きが制限されると、膝や足首に過剰なストレスがかかりやすくなります。スキーで膝を痛めやすい人の中には、股関節がうまく使えていないケースが多い。エイミングヒップやフロッギー、ニーグラブは、股関節を大きく動かすよりも、雪上で必要な方向に”使える状態”をつくることを意識した動きです」

見た目には地味な動きですが、ターン中の体の使い方に大きく影響します。

③ 肩甲骨・上半身(肩甲骨クロス)

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スノーボーダーに多い「転倒時の肩の怪我」は、肩甲骨の可動性と深く関係しています。

「肩甲骨の動きが硬いと、転倒したときに衝撃をうまく逃がせなくなります。肩甲骨をしっかり動かすことで、上半身の緊張をほぐし、ストック操作やバランス調整もしやすくなる。転倒時の衝撃分散にも寄与します」

スキーヤーにとっても、ストック操作の質に関わる大切な部位です。

「体操をやらせる」のが目的ではない

SAFETY RIDE体操には、大きなコンセプトがあります。「体操をやらせること」ではなく、滑る前に正しく身体を動かすことが当たり前になるカルチャーをつくること、です。

yukiyamaが掲げるSAFETY RIDEプロジェクトの一環として、専門家監修のもと、誰でも・どこでも・真似しやすい形で「正しいウォームアップ」を可視化しました。初心者から上級者まで、すべてのスノーボーダー・スキーヤーが安全に長く雪山を楽しめる環境づくりを目指しています。

「滑る前の2分が、最高の1本をつくる」というコンセプトのもと、準備運動を「作業」ではなく、意識を切り替えるスイッチとして位置づけています。

動的ストレッチを中心にしている理由

SAFETY RIDE体操が動的ストレッチ(動きながら行うストレッチ)を中心に構成していることには、明確な理由があります。

従来の「グーっと伸ばして保持する」静的ストレッチは、運動直前に行うと一時的に筋出力が低下する可能性があることが、複数の研究で示されています(Kay & Blazevich, 2012 / Opplert & Babault, 2018)。

一方、動的ストレッチには、筋温を高めながら関節を動かせる、神経・筋の協調性が高まる、運動直前のパフォーマンス低下を起こしにくいといった特性があります。

「ゲレンデにはもう一つの現実的な理由もあります。リフト待ちや移動中など、身体が冷えやすい環境で行うことが多いので、短時間・立ったままできる構成が重要なんです。座り込んで時間をかける体操では、現場でやってもらえません」

「整えてから滑り出す」という文化へ

加藤さんが最後に強調したのは、体操そのものより、その背景にある考え方でした。

「雪山は、自然と人が向き合う最高の場所です。だからこそ、安全に楽しんでほしい。たった2分の準備体操で、身体は驚くほど変わります。この体操を通じて、安全で快適な滑走文化を一緒に広げていければと思っています」

SAFETY RIDE体操は「これをやれば絶対にケガをしない」でも「やらないと危険」でもありません。滑る前に自分の身体の状態を確認して、動きやすい状態に整えてから滑り出す。その小さな積み重ねが、無理な動作や判断ミスを減らし、結果的に安全へとつながっていきます。

ケガの発生率が高くなるシーズン終盤、是非一度ゲレンデで試してみてください。

手本動画:https://www.instagram.com/p/DSrxwYmkfPo/

音源:https://music.apple.com/jp/album/safetyride%E4%BD%93%E6%93%8D/1863588662?i=1863588669

監修者プロフィール

加藤 尚(かとう ひさし)

柔道整復師/蓮根かとう接骨院 院長

日本足病学協会認定インソール療法スペシャリスト/シューズ療法スペシャリスト

25年以上の臨床経験を持ち、スポーツ障害から日常のケガ、足専門外来など幅広く対応。自身もスノーボーダーとして雪山に立ち、身体の状態ひとつで滑りやすさや安心感が変わることを実感してきた。

蓮根かとう接骨院|〒174-0043 東京都板橋区坂下1-41-16 TEL: 03-5918-8813

診療時間|平日 10:00〜22:00 / 土曜 10:00〜19:00(日曜・祝日休診)※予約優先制

公式サイト:https://hasune-kato.com/

予約サイト:https://dg7.power-k.jp/llogin/13357/13358/

LINE公式アカウント:https://lin.ee/FMVEtr0

クレジット

振り付け:蓮根かとう接骨院(https://hasune-kato.com/

歌:はちごんガールズ(https://www.tunecore.co.jp/artists/8gongirls?lang=ja

伴奏:野本かもめ(https://www.instagram.com/momomomokao/

提供:yukiyama保険 / Anon

参考文献

全国スキー安全対策協議会『スキー場傷害報告書 2017–2025』

Behm & Chaouachi, 2011(Sports Medicine)

Fradkin ら, 2010(J Strength Cond Res)

Opplert & Babault, 2018(Frontiers in Physiology)

Kay & Blazevich, 2012(Sports Med)

FIS コンセンサス声明(2025, 競技スキー/スノボのウォームアップ&クールダウン)