大切なのは滑り手が自然の変化を感じて伝えていくこと丨POW JAPANの取り組み

大切なのは滑り手が自然の変化を感じて伝えていくこと丨POW JAPANの取り組み

yukiyama

2024.01.18

「気候変動問題」というとスケールが大きすぎて自分ごととして捉えるのは難しいと思いますが、特に今シーズンはスキー・スノーボードの滑り手であるみなさんはこの暖冬に異変を感じているのではないでしょうか。ユキヤマはアプリのサービス提供を通じて、自然の中で体を動かして遊ぶ事の重要性を提唱しています。しかし、雪が降らなければ我々は遊び場を失ってしまいます。「滑り手として知っておいた方がいいことを教えてもらおう」ということで今回はProtect Our Winters(以下:POW)JAPANの協力の元、事務局長の高田さん、メンバーの鈴木さんに気候変動の捉え方や大事な考え方を話していただきました。

長野県白馬村にて取材を行った

自分たちが好きなスノーボードを楽しみ続けたい

滑り手として自然と触れ合う中で感じたこと

高田さん「わたしたちはスキー・スノーボードが大好きなので、滑る楽しみを通して気候変動という問題に向き合おうとしています。愛好家のみなさんは今年の暖冬も含め、その気候の変化に肌感で気づいていると思っていて、愛するウィンタースポーツが将来的にできなくなる可能性に危機感を感じています。『これをやらなきゃならない』みたいな説教じみたことを言うつもりはありません。わたしたちと同じ滑り手である皆さんにも、気候変動に関心をもってもらえると嬉しいです」

POWが発足したのキッカケ

高田さん「2007年、アメリカでプロスノーボーダーのジェレミー・ジョーンズによってこの運動がスタートしました。ジェレミーは、自分の地域だけでなく世界的に雪が少なくなり、スキーシーズンが短くなっていることを早くから感じ取っていました。これは彼の周りの人々とも共有されていた話題でしたが、この問題に対応する組織やネットワークがなかったため、自分で立ち上げることにしたんです。最初は滑り手が中心の集まりでしたが、次第にアウトドアブランドやスノーボードブランド、スキー場が参加し始め、ウィンタースポーツ全体のムーブメントに発展しました。そして、この運動は世界的に広がり、スキーやスノーボードだけでなく、クライミングやマウンテンバイクやトレイルランニングなど他のアウトドアスポーツにも及んでいます」

POW JAPANの立ち上げの背景

高田さん「先述の通り、POWがグローバルで活動していたので『ウィンタースポーツの盛んな日本にもあるべきだ』という話があり動き始めました。その中でジェレミーと面識がある小松吾郎さん(以下、吾郎さん)が適任だろうということで、日本の顔として選出されました。その流れで吾郎さんが代表理事になり、わたしが事務局長という形でスタートしました」

2024年の大きな動き

国のエネルギー基本計画に声を上げる

高田さん「ご存知の通り、世界のニュースでは気候変動に関する報道がどんどん増えています。企業の取り組みも活発になり、社会の状況は大きく変わりました。今や、私たちが『気候変動は深刻だ』と言う必要はなくなってきています。ですので、この問題に対してどのように行動すべきかを皆に示し、一緒に動くことが私たちの役割です。例えば、2024年には日本のエネルギー基本計画が改定されます。この計画は、日本のエネルギー戦略を決定するもので、電源構成においては、どれだけの割合を石炭、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーに割り当てるかを定めたりします。その中で、例えば再生エネルギーの割合が高く設定されれば、市場はそれに反応し、再生エネルギーへの投資が加速します。逆に、化石燃料の使用を継続する方針が計画に含まれると、再生エネルギーへの移行は遅れていきます。市場はこのような政策に敏感に反応しますし、自治体の政策や企業の取組へのメッセージにもなるので、日本がどのようなエネルギー戦略や気候対策を決定するかが重要になってきます」

*電源構成:電力を作るエネルギーの種類で分類した発電設備の割合を指す

衆議院第一議員会館にて行われた院内集会でメッセージを伝える吾郎さん

政策決定のタイミングを知ることが大切

高田さん「政策決定者の心を動かすことが重要です。例えば、直接官僚や国会議員に働きかけるまたはメディアを通じて市民の声を届けるなど、伝え方は様々です。そういった働きかけは大事ですが『2024年は日本の重要なエネルギー政策が決定されるタイミングだよ』ということを多くの方に認識してもらうことが重要です。まずは、2024年に重要な決定があることを共有し、それに向けて行動を起こしていきたいと思います」

鈴木さん「もう少し詳しい話をすると、エネルギー政策は主に経済産業省が策定していて、審議会のメンバーや策定に関与する産業は再生可能エネルギーへの転換よりも既存の化石燃料や原子力に前向きです。遠い場所で決められていて関心を持ちづらいですが、実は選挙権を持ち、消費者でもある私たちは影響を与えられる存在です。なので、気候変動に対する市民のリテラシーや意識の醸成が非常に重要だと思います。その手段として、発信や勉強会、ときには直接『声』を届けるためにデモや署名という活動も行っています」

アウトドアコミュニティのメンバーが中心となったパレード

POW JAPANならではの立ち位置と今季の重要な取り組み

気候変動問題に対してのポジショニング

鈴木さん「気候変動問題に対しては、投資の視点から活動する団体や、弁護士連盟の団体、さらには、国の政策に対して意見を言えるような大企業の組織も存在します。その中でも、POWはスキーやスノーボード愛好者の関心を集めるという点でユニークな存在です。ウィンタースポーツを楽しむ私たちは、雪の降り方や天気の変化を敏感に感じますよね。その変化を実感している私たちから行動を起こすことは、非常に良いアプローチだと思います。特に、スキーやスノーボードが生きがいのような人たちを巻き込み、彼らが気候変動の重要性を自発的に発信してくれることに期待しています」

重要な取り組みのサステナブルリゾートアライアンスについて

高田さん「2023年12月にサステナブルリゾートアライアンスというプロジェクトを立ち上げ、気候変動に向き合うスキー場、サステナブルな運営を目指すスキー場が集うプラットフォームを作りました。国の方針や目標だけでなく、それを実現するための地域や企業の取り組みが重要だと考えており、まずは慣れ親しんだスキー産業をサステナブルなものにし、二酸化炭素排出をしない経営にシフトしていくことを目指しています。なので、まずはスキー・スノーボード愛好者を巻き込みながら、スキー場がより環境に優しく、サステナブルな場所になるよう応援していきたいと思っています。スキー産業全体が変わっていけば、それが社会全体の変化につながっていくと信じていますし、何より自分たちの遊び場が環境に配慮された空間になっていくことは、純粋に嬉しいことです。」

https://protectourwinters.jp/sustainableresort/

鈴木さん「各スキー場にゼロカーボンやサステナブルを目指すための取り組みを促しています。例えば、再生可能エネルギーへの切り替え、ごみの削減、地域の食材をレストランで使用するなどです。これらの取り組みを通してスキー場だけでなく、スキー場を中心として成り立つ地域全体を巻き込んでサステナブル化を目指しています。モデルとなるスキー場ができれば、その成功事例を全国に波及させ、スキー・スノーボードの愛好者に『サステナブルなスキー場だから利用したい』と思ってもらえるように取り組んでいます」

───長野県の白馬村ではもうすでに八方尾根スキー場、白馬五竜スキー場、白馬岩岳スキー場がアライアンスに加盟しサステナブルな取り組みを実践している。

サステナブルと相反するように見える人工降雪機

高田さん「スキー場の存在は非常に大きな意味を持っていると思います。スキー場が自然との接点を提供することで、より多くの人々の関心が自然に向けられると思っています。最初からバックカントリーをみなさん目指していたわけではありませんよね。ですので個人的には、降雪機を使ってでも採算が合うのであれば、ある方がいいと思っています。そうでなければ、特に子供たちの自然との接点が減少してしまい、雪に触れる機会がなくなってしまうかもしれません。しかし、稼働に必要なエネルギーを再生可能エネルギーにするなど、環境に配慮した運営は考慮するべきだと思います」

自然の変化を感じ取って伝えていくことの重要性

事実として起きている気候変動

鈴木さん「温暖化があるかないかという議論はよくありますが、それは個人的にはあまり重要ではないと思っています。事実として、白馬では年々雪が減っています。雪が減れば、山の上の水不足が深刻化し、数年後には田畑や街への水の供給にも影響を及ぼす可能性があります。つまり、温暖化を別として考えても、自然の変化は起こっているのです。皆さんがフィールドで感じる『今年は雪が少ない、例年より暑い』のようなことを、変化を感じていない人に共有する。これだけでは根本的な問題の解決にはならないかもしれませんが、”意識を向ける”ことが”自分ごとに”、行動の一歩に繋がると思います」

滑り手の我々に求められること

高田さん「POW JAPANが取り組んでいる気候変動への対策に皆さんが参加し、情報を活用してくれると嬉しいですが、人々の興味や関心は様々だと思っています。スノーボーダーやスキーヤーは自然で遊ぶ人たちですが、同時に自然を守る存在であることを意識してほしいと思っています。都会の人たちには見えない価値や、自然から学べることがたくさんあると思います。皆さんが自然に対して何かを感じ、行動に移すことが、最終的に私たちの目指す目標につながります。そういった多様な取り組みを通じて、私たちはより良い未来を築いていきたいです」

最後に:雪山を守ろうウィーク supported by POW&BURTONが開催中

POW JAPANとBURTONとのコラボで「雪山を守ろうウィーク」を開催中。キャンペーンに参加して商品をゲットしよう!

◆参加方法
yukiyamaアプリのタイムライン上に「#GREENYOURRIDE」を付けて自分の行なっているウィンタースポーツに関するエコなアクションを発信しよう!投稿いただいたユーザーの中からイベント後に行われるYouTubeライブ出演予定のコメンテーターたちに最も刺さった投稿の方にはPOWオリジナルフーディをプレゼント!その他BURTON賞としてのBURTON Day Hiker 22L バックパック、POW賞としてPOWオリジナルタンブラーをプレゼント!

イベント詳細URL:https://yukiyama-web.com/event/yukiyama-pow-2024/