
9月は秋の気配を感じてそわそわしてくる季節。でも、スノーヤーにとって秋は冬の前触れでしかありません。私も朝晩が冷えるたびに今年はどんなシーズンになるんだろうと考えはじめてしまいます。
で、今年はちょっと落ち着かないニュースが出ました。エルニーニョ現象、しかもスーパーな記録級らしい。気象庁の監視速報によると、監視海域の海面水温は8月の時点で基準値より3.4℃高い。8月としては1949年以降で最も高い値で、これまでの記録だった1997年の3.0℃を上回っています。冬にかけては、過去最高の1997年12月(3.6℃)に迫る見込みだそうです(*1)。
エルニーニョの冬は日本付近の冬型が弱まるので、全国的には暖冬・少雪に傾きます。ただ、気象庁の整理にはもうひとつ書いてあるんですよ。エルニーニョの冬は、東日本の太平洋側で降水量が多くなる傾向がある(*2)。
降るには降るんです。それが雨になるか雪になるかは標高が大事。それであるスキー場を思い出しました。
2年前にこの連載で「南岸低気圧が来た時に高確率で大雪になる穴場」と書いた場所があります。そしてそのとき、存続の危機にあるスキー場でした。
そして、ゲレ食がめちゃくちゃ美味いレストランがある場所。2026年に再訪してきました
それでは、第30回ゲレ食放浪記はじめますっ!(パチパチパチ
御嶽スキー場
長野県王滝村の御嶽スキー場。第9回で紹介して以来、2年ぶりの登場です。

《2年ぶりに来ました。板を担いだ時点でもう機嫌がいい》
火山としては富士山に次いで2番目に高い御嶽山の南東斜面にあるスキー場。
ゲレンデは標高1,600mから2,240m。標高差640m、ゲレンデの全長は7,692mあります。内陸の高標高らしい高良質な雪と中央アルプスや南アルプスを望むパノラマが特長です。気温が高く標高の低いスキー場が雨になってしまう日でも、ここは雪で受けられる。しかもそういう日の雪は重たくて積もりやすい。訪問日の3月でも新雪30cm、雪解けを止める側の雪でした。

《ベース。快晴、そして駐車場が埋まる大盛況》
着いてまず驚いたのが混み具合でした。第2駐車場も、奥も、センターハウスの前も全部埋まっている。
御嶽ってこんなに混むスキー場だったっけ。いつも平日に来ているとはいえ、それにしてもです。うれしい誤算でした。
天気は思いのほか晴れました。そして前の晩に30cmほど降ったらしい。
私が御嶽に来る狙いは硬いバーンです。氷みたいに締まった斜面を滑りに来ている。ところが新雪に当たることが多く、まだ一度も目当ての雪質に当たっていません。そろそろ滑らせてほしい。

《最上部。標高2240の看板が立っています》
上まで上がると向こうに白い山並みが並びます。標高が高いというのは、つまりこういう景色のことです。

《3月の圧雪バーン。よく走ります》
そして日本最高とも言われる迂回コースがあります。

《御嶽山。これが見たかった》
ちょっと隠れちゃってるので次回またご紹介しますっ!

《ゲレンデ下部も昼過ぎまで木々が白い》
さて、2年前の記事で私はこう書きました。村がスキー場を存続させるかどうか検討している、と。クラウドファンディングのリンクまで貼って、応援してくださいとお願いしました。残りました。2025年12月、王滝村の村長が村議会で存続の方針を表明しています(*3)。
本当によかった。やはりゲレ食は正義。この日も食べに来ています。
レストランオリオン
ゲレンデベースのセンターハウス、プラザオリオンの中にあるのが「レストランオリオン」です。
で、店に入って最初に目に入ったのがこれでした。

《のぼりが立っている。ただごとではない》
第10回信州チャンピオンメニュー決定戦「ゲレ食バトル2025-26」。長野県索道事業者協議会が主催して、お客さんの投票で県内のゲレ食の順位を決める大会です。
そこで、ここが1位と2位を持っていきました。え?単独スキー場で1位・2位独占!どういうこと!?

《第1位と第2位。同じスキー場です》
第1位「味噌鍋定食」、第2位「山賊焼き定食」。1位の味噌鍋定食、実は第9回で紹介した、あのいのぶた味噌鍋定食のバリエーションメニューです。2年前に「王滝食堂の味を復刻した平日限定メニュー」として書いた一皿が、県のてっぺんを獲っていました。すばらしい。
さらにyukiyamaのアプリユーザーが選ぶ「yukiyama FAN AWARD」でも、御嶽スキー場はゲレ食部門で第1位に選ばれています。以前から御嶽のゲレ食を推している身としては嬉しいやら誇らしいやら。

《第2位、山賊焼き定食。今日のお目当てはこっちです》
味噌鍋定食は平日限定。この日は土曜でした。そういうわけで、今回は2位を攻めます。
山賊焼き定食┃衣で語る揚げ物
山賊焼き定食、1,500円(2026年シーズン価格)。

《一式。ご飯、味噌汁、小鉢が2つ》
山賊焼きは松本や塩尻のあたりのソウルフードです。鶏をタレに漬け込んで、片栗粉をまぶして揚げる。長野県ではスーパーの惣菜コーナーにも並んでいるくらい身近な料理で、それだけに当たり外れも見てきました。

《でかい。そして薄い》
唐揚げを想像していると、たぶん違うものが来ます。ころんとした塊ではなく、板状に広げた鶏をそのまま揚げて切り分けてある。
正直に言うと、出てきた瞬間は「薄っぺらいな」と思いました。これで満足できるんだろうか、と。
なにもつけずに、まずひと口。

《この衣を見てください》
うまい。
揚げ物の衣って、たいていは残念要素になりがちじゃないですか。できれば薄いほうがいい、くらいの扱い。
ここは逆でした。サクサクで、衣そのものに味がある。
レモンをかけるか、醤油か、ソースか。揚げ物を前にするとつい考えますが、そんなもんいらん。塩もいらない。衣と肉とご飯だけで成立します。
肉の話をしないまま揚げ物を褒めることになるとは思いませんでした。

《いただきますの顔》
食べ終わったあと、私はこんなことを口走っていました。
「山賊焼き倍盛りとか食いたいな。メガ盛り山賊焼き丼。」
気が早い。でも、わかってもらえると思います。「超当たりのところ引いた」「うますぎやろ」。語彙はそのあたりで尽きました。
デビルチキンつけ麺┃カレーを、つけ汁にした
そしてもう一品。前回には無かった新顔が、メニューに増えていました。
デビルチキンつけ麺、1,500円(2026年シーズン価格)。

《2品並べると、テーブルがにぎやかになります》
御嶽にはスリランカカレーの「ララカレー」が入っていて、第9回ではそこのデビルシーフードカレーを食べました。辛いやつです。
これは、そのカレーのチキンつけ麺版。カレーつけ麺だと思ってもらえば、だいたい合っています。

《麺の丼とつけ汁》
麺はコシのある太め。上に鰹節と刻み海苔が乗っています。つけ汁は赤みが強く、いかにも辛そうだ。
ベースはココナッツと魚介の出汁。食べた第一声は「ほんのりちょっと甘かった」でした。そして辛い。デビルの名前は飾りではありません。
辛いけれど、他のスキー場では食べられない。それだけで来る理由になります。
食べ進めると鰹節と海苔がけっこう効いてくる。スパイスの汁に和の乗せ物は喧嘩しそうなものですが、意外と成立します。
正直に書いておくと、量は多くありません。山賊焼きのあとに頼んでちょうどいいくらいです。(体重130kgの感覚です)

《丼に立っているこのでかいやつ》
そして丼に立っているこの大きな円盤。インドやスリランカの豆せんべい、パパダンです。第9回でも出てきました。
麺に入れるか、つけ汁に入れるか。迷った結果、麺のほうが正解かなーってことで砕き乗せ。

《結局こうなる》
パリパリ割って乗せたら食感変化を楽しめ、そしてめちゃくちゃ食べにくくなりました。麺と海苔とせんべいが一体になって箸から逃げていく。おいしいんですけどね。一欠けらも残したくないデブ的攻略法を考えるためにまた食べに来なくてはならない。
ちなみに2年前の記事をみたら、パパダンの食し方を模索している。やることは変わりませんでした。次こそはっ!
最後に:このスキー場は飯のことばかり考えている
食べ物の話を、もうひとつだけ。

《夜弁当》
昼を食べたあと、「夜弁当」というものを受け取りました。朝8時から12時のあいだに予約しておくと夕方に渡してもらえる、1,500円の弁当です。カツに山菜に煮物に卵焼き。
利用者が夜にわざわざ山を下りなくても食べられるようにという話でした。移動しながらひと口味見しましたが、トンカツがちゃんとうまい。
しかも今シーズンからは「おんたけ飯店」が始まるそうです。毎週土曜の夜、オリオンの2階で、夜鳴きそばが一杯500円(*4)。
昼はゲレ食、夕方に弁当、土曜の夜はそば。
滑っていない時間まで面倒を見てくれる。どれだけ利用者の胃袋を気にするんだ、このスキー場は。
2年前、私はここを「無くなるかもしれないから紹介させてほしい」と書きました。その場所が県のゲレ食で1位と2位を獲って、yukiyamaのユーザー投票でも部門1位になって、いまは夜の食堂まで始めようとしています。前に紹介した場所が前より元気になっているというのは、続けている連載としてはかなり嬉しい出来事です。
今シーズンは記録的なエルニーニョで全国的には雪が少ない予報が出ています。それでも標高1,600mから上の雪は、そう簡単には無くなりません。そのうえ、「南岸低気圧で大雪になる穴場」と紹介する筆頭のスキー場です。条件がそろった日にここにいられたら、たぶん最高の一日になります。
とりあえず、飯だけ食いたい諸君!御嶽は夏も開いています。お山食堂、キャンプ場、レンタルバイク。御嶽山の紅葉は9月下旬から10月上旬が見頃です。雪を待つ必要はありません。
ぜひ御嶽に食べ(遊び)散らかしにきてくださいね!
それじゃまた次のゲレ食で。ごちそうさまでしたっ!
本日のゲレ食レストラン
・店名:レストランオリオン(御嶽スキー場 センターハウス〈プラザオリオン〉2階)
・営業時間:10:00〜16:00(ラストオーダー15:00)
・リフト営業:2026-27シーズンは12月12日〜4月4日を予定。1日券は大人5,500円/シニア50歳〜5,000円/高校生4,500円/小中学生1,500円/未就学無料
・場内施設:売店 8:00〜17:00 / レンタル 8:00〜16:30 / スクール 8:30〜 / 三笠の湯 13:00〜18:00(最終受付17:30)
・おんたけ飯店:17:00〜21:00(土曜日のみ)。今季開店、夜鳴きそば一杯500円、オリオン2階の予定
*1 エルニーニョ監視速報(No.408)2026年9月9日 気象庁 https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/houdou/pdf/elnino202609.pdf
*2 エルニーニョ現象発生時の日本の天候の特徴 気象庁 https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/tenkou/nihon1.html
*3 御嶽スキー場存続へ 王滝村長が表明 信濃毎日新聞 https://www.shinmai.co.jp/news/article/gf01d51tnnmfm43p2oifo1b0
*4 御嶽スキー場 公式X(@ontakeskijo)2026年9月16日の投稿
この記事を書いた人

えすぺゆき(北島裕也)
1986年生まれ、東京出身。Snow Scenes Creator。
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メディア出演、SNS活動、動画・写真撮影を通じて雪山やゲレンデの魅力を発信する人。ゲレンデ撮影(追い撮り)のスペシャリスト。雪上での映える撮影とゲレンデの美味しい食事(ゲレ食)をこよなく愛する。
