
8月。夏休みも後半戦、そろそろ宿題が炎上している家庭もある頃でしょうか。私が子どものころの夏休みはクワガタとザリガニを捕りに行くものでした。
そのクワガタなんですが、夏にゲレンデのふもとで世界中から集めるイベントをやっているスキー場があるのをご存じですか。ヘラクレスオオカブトまで来るらしい。夏のスキー場が何かしらイベントをやるのは珍しくありませんが、それにしても振れ幅がすごい。
で、その話を思い出したときにもう一つ思い出したんです。あそこ、冬も南国だったなと。
ヘラクレスオオカブトの故郷は中南米。そして私が真冬のそのゲレンデで食べた一皿は、カリブ生まれ。つまりあのスキー場、季節を問わず南国が上陸している。
今回はその一皿と、赤い小瓶のおはなしです。
それでは、第29回ゲレ食放浪記はじめますっ!(パチパチパチ
ノルンみなかみスキー場
舞台は群馬県みなかみ町のノルンみなかみスキー場。訪問したのは2026年の年始です。
このスキー場、とにかく「近い」。関越自動車道の水上ICから3km弱、車でおよそ5分。群馬県では首都圏から最も近いスキー場と言われています。高速を降りたらもう着いている。近すぎて心の準備が間に合いません。

《ゲレンデベース。高速を降りて5分でこの景色です》
私がここに来るのは、だいたい年末年始。東京と雪国を行ったり来たりする時期に、その通り道としてひょいと立ち寄れるのが最高なんです。「ちょっと1本滑ってから帰るか」が成立してしまう立地。危険な魅力があります。
そしてもう一つ。ノルンはみなかみ町でも南寄り、豪雪の谷川岳より手前に位置しています。上越国境の向こうが真っ白に降っていても、ここまで下りてくると空が明るい。私の中では「とりあえず晴れを拾いたい日」の候補地です。この日もそうでした。県境は雪。それでノルンを選んでいます。

《ゲレンデマップ~スキー場公式サイトより引用~》
スペックは山頂1,220m・ベース820mで標高差400m。コースは5本、リフトは4基。初級30%・中級50%・上級20%で、最長は「C~Dコース」をつないで約2,000mです。
規模は小ぶりですが、幅の広い中斜面が素直に伸びていてとにかく気持ちよく回せる。ガツガツ攻めるというより、テンポよく何本も流すのが似合うゲレンデです。年始でも人工降雪で土台がしっかり作られています。

《晴れるとごきげんになります(2024年12月)》

《最上部から。雪山の上なのに、下界がよく見える(2024年12月)》
最上部まで上がると、眼下に街並みと平野がずどんと広がります。山に閉じこもる感じがなくて、いつでも帰れる安心感がある。それでいて雪はちゃんと雪山です。
PLAY THE EARTH
さて、本題のゲレ食です。
ノルンにはセンターハウス2Fの「トロル」、「ノルンバーガー」、「麺屋 むつ葉」、「スイーツガーデン」と複数の飲食施設がありますが、今回のお目当てはそのどれでもありません。

《この外階段を上がった先》
センターハウスの外階段を上がった3Fにあるのが「PLAY THE EARTH(プレイジアース)」。ゲレンデを一望できるテラス席と店内席で、席数はおよそ50席。営業時間は10:00〜15:00です。

《テラス席》
雪山の上に、南国。
というのもこの店、夏は江ノ島で海の家をやっています。夏は海、冬は雪山。看板メニューのジャークチキンを、シーズンごと場所を変えて焼いているわけです。かっこよすぎませんか。

《オーブンの中でじりじり》
このジャークチキンは注文が入ってから1枚ずつオーブンで仕上げます。多少の待ち時間は覚悟しておいてください。

《調味料がめちゃくちゃ充実している》
そしてまず目を引くのが調味料です。タバスコ、ケチャップ、マヨネーズ。かごにまとめて置いてあります。この時点で、わかっている店です。
そしてもう一本。店員さんがおすすめですと言って、席まで持ってきてくれた瓶があります。

《KEN chan SAUCE》
「KEN chan SAUCE」——ケンちゃんソースです。
これ、ただの調味料ではありません。世界を旅する「ケンちゃん」が旅先のインスピレーションから作り上げたオリジナルのチリソースで、パプアニューギニアの旅で完成形になり商品化されたという経歴の持ち主。ラベルに世界地図が入っているのはそういうことなんですね。中身は国産大豆・小麦の醤油に、国産唐辛子と国産昆布。辛さは「Hot!/Hotter!!/Hottest!!!」の3段階表記です。
そして厄介なことに、依存性が高い。
この店での正解は、とりあえず何にでもかけることです。ジャークチキンにも、カレーにも、白飯にも。わざわざ持ってきてくれたんだから、使わない手はありません。ただし、かけすぎ注意。名前のかわいさに油断していると普通に辛すぎます。
ジャークチキンライス┃雪山でカリブを食べる
看板メニュー、ジャークチキンライス1,500円(2026年シーズン価格・スープ付き)。

《ジャークチキンライス1,500円。黄色い皿がもう夏》
主役のジャークチキンは、皮目にがっつり焦げ目がついた状態で登場します。付け合わせは千切りキャベツと白飯。
見てくださいこの色。焦げ目と脂とスパイスが混ざった逃げ場のない茶色。茶色は罪深いんですよ。

《マヨはセルフ。かけたいからかけています》
そして忘れてはいけないのがマヨネーズ。これはセルフでかけます。かけたいからかけている。太る味が好きなんです。やっぱこれがいいんですよ。(ドヤ顔)

《さあ、かけましょう》
そして、これだけは言わせてください。ジャークチキンライスには、ケンちゃんソースをかけてください。
焦げ目の上からひと回し。醤油ベースなので違和感なくマッチします。そこに唐辛子の辛みと昆布の旨みが乗って、同じ皿が途中から別の料理になります。

《ひと回し》
食べると皮のパリッとした食感の下から鶏の脂と肉汁。焦げているのに中はジューシーで、ただ焼いただけではなさそうです。スパイスは尖った辛さではなく、じんわり効いてくるタイプです。

《この顔である》
滑ったあとの身体に、塩気とスパイスと脂と米、そして辛み。これがまずいわけがない。
ジャークチキンカレー┃スパイス on スパイス
そしてもう一皿、ジャークチキンカレー1,800円(2026年シーズン価格・スープ付き)。

《ジャークチキンカレー1,800円》
ライスの構成そのままに、濃い茶色のカレーが加わったスタイル。マヨネーズは当然かけます。
ひと口いって、思わず声が出ました。辛い。しっかり辛口です。
色が濃くてスパイスが立っている。具がごろごろ入っているタイプではなく、スパイスと辛さがまっすぐ前に出てくる。そういうカレーです。
こういうカレーを求めてたんですよ。いけるくちっすね、先輩。

《カレーをくぐらせたチキン》
チキンをカレーに沈めてから引き上げ、白飯にのせて食べる。これが正解ルート。焦げの苦みとカレーのコクが重なって、味の層が一段深くなります。ジャークチキンのスパイスとカレーのスパイスは喧嘩するかと思いきや、方向性が近いのでむしろ増幅し合う。スパイス on スパイス。
ケンちゃんソースTKG┃現地でしかできない反則技
そしてもう一つ、どうしても紹介したい食べ方があります。
日本各地のゲレンデでTKGを食べ歩いてきましたが、これは自信をもって人に勧められるやつです。
ライスも生卵トッピング100円も、どちらも正式なメニューです。そこに醤油ベースのケンちゃんソースが常備されている。……この3つが揃うと、何が起きるかお分かりですね。
そう、卵かけご飯です。

《かけて混ぜる。それだけ》
醤油がベースなのでそのままTKGの醤油として成立してしまう。しかも唐辛子と昆布入り。旨みと辛みが最初から入っている醤油、という反則的なポジションです。

《遠慮なくいきます》

《これが正解。異論は認める》
一口いった瞬間の、私の感想がこちらです。
から! うま! から!
語彙、消滅。
でもこの順番がすべてなんですよ。まず辛さがガツンと来て、卵のまろやかさで一回まるくなって、そこに昆布の旨みが追いついてきて、そしてまた辛さが戻ってくる。この往復が延々と続く。
正式メニューの組み合わせなので怒られはしませんが、店として推している食べ方かというとたぶん違う。裏技寄りの遊びとしてどうぞ。
最後に:ICから5分、3階に南国
ノルンみなかみスキー場。関越道の水上ICから5分、東京からの行き帰りにひょいと寄れて、コンパクトだけど気持ちよく回せるゲレンデ。

《WELCOME TO NORN。また来ます》
そして3Fの店が開くのは、冬のあいだだけ。雪の照り返しの下でスパイスの効いた鶏肉をかきこんで、赤い瓶で卵かけご飯を作る。冬にやることじゃないでしょと思いながら、たぶん来シーズンも同じことをします。
というか毎回言ってるんですよ。「今度こそジャークチキン以外も食べねば」って。トロルも、ノルンバーガーも、麺屋 むつ葉もあるのに、気づけば外階段を上って3Fでジャークチキンを頼んでいる。学習しない。次こそは。たぶん次こそは。
真夏にこの記事を読んで「辛いもの食べたい」となった方、申し訳ない。ゲレンデは冬までお預けです。
でも、この店は夏になると江ノ島にいます。今年は9月13日まで営業。ジャークチキンだけなら、そっちで会えます。
ぜひノルンに食べ(遊び)散らかしにきてくださいね!
それじゃまた次のゲレ食で。ごちそうさまでしたっ!
本日のゲレ食レストラン
・店名:PLAY THE EARTH(プレイジアース/ノルンみなかみスキー場 センターハウス3F)
・場所:〒379-1614 群馬県利根郡みなかみ町寺間479-139
・営業時間:10:00〜15:00(冬季のみ・約50席・テラス席あり)
・アクセス:関越自動車道 水上ICから約3km(車で約5分)/JR水上駅から無料シャトルバス約20分
・リフト営業:2025-26シーズンは12月18日〜3月22日。1日券6,300円・4時間券5,500円(金土日はナイター3,000円、土日は早朝券3,800円)
・公式:https://www.norn.co.jp/winter/
この記事を書いた人

えすぺゆき(北島裕也)
1986年生まれ、東京出身。Snow Scenes Creator。
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メディア出演、SNS活動、動画・写真撮影を通じて雪山やゲレンデの魅力を発信する人。ゲレンデ撮影(追い撮り)のスペシャリスト。雪上での映える撮影とゲレンデの美味しい食事(ゲレ食)をこよなく愛する。
