
7月、下界は連日の猛暑日。こうも暑いと食欲が落ちる……はずなのに、夕方になるとどこからともなくバーベキューの匂いが漂ってきて、結局頭の中は肉のことばかりです。焼肉、食べたい。それも、とびきりの和牛を。
となれば、書くしかないでしょう。日本中の高級和牛のルーツにあたる“あの牛”を、雪山のふもとで肉をいっぱいかきこんだ、牛づくしの一日のことを。今回は肉好きにこそ全力でおすすめしたいゲレ食です。
それでは、えすぺゆきのゲレ食放浪記。第28回はじめますっ!(パチパチパチ
但馬牧場公園スキー場
今回滑りに……もとい食べにきたのは、兵庫県北部・新温泉町にある但馬牧場公園スキー場。「夢千代の里」湯村温泉の温泉街から車を走らせること10分ほどで到着します。温泉から近すぎる。

《県立但馬牧場公園&スキー場の看板。「入園・駐車無料」の頼もしい文字》
看板にある通り、ここは県立但馬牧場公園という“四季型”公園の中のスキー場。
標高約600mの愛宕山一帯が、夏は但馬牛がのんびり草を食む放牧地になり、冬は雪に覆われてゲレンデになります。
つまり、但馬牛の牧草地を滑らせてもらっているわけです。そして入園無料・駐車無料。さすが県立、太っ腹すぎる。
リフトは中間降り場つきの全長639mのペアリフトが1本。
1日券は平日2,500円・土日祝3,500円とお財布に優しく、土日祝は朝8時からリフトが動くのも嬉しいポイントです。

《リフト乗り場。緩斜面と中斜面を1本でカバーする働き者》
訪問したのは2026年1月26日、大雪明けの月曜日。大雪後×平日×ローカルゲレンデ=貸切パウダーの方程式。
ここの上部エリアはなかなかの斜度があるため新雪の日に来てみようと狙っていました♪

《ゲレンデマップ~スキー場特設サイトから引用~》
リフトを上がって振り返ると、雪をかぶった田園と山々の大パノラマ。そして眼下には、誰もいない一枚バーンが広がっていました。

《展望台からワールドコースの眺め。ゲレンデにもリフトにも麓にも、人がいない》
コースは4本。幅広で優しいパラダイスコース、非圧雪パートで新雪が楽しめるスカイロードコース、展望台の裏へ回り込む林間のパスチャーコース、そして急斜面に天然コブが育つ上級者向けのワールドコース。コンパクトながら、初級から上級までしっかり滑り分けられる構成です。この日はスカイロードの落ち込みとワールドコースを交互に滑り倒していきましたわ。

《スカイロードコースは吹き溜まりやすく新雪祭り》
この日は朝イチから非圧雪へ突撃して、ふかふかの新雪を貸切で何本もいただきました。なにせ人がいないので、お昼を過ぎても新雪が食べ残されている。最高か。

《午後には青空。斜面のシュプール、大体私のです》
午前のどんより雪雲は午後に抜けて青空に。貸切パウダーの一日、ごちそうさまでした。
レストランふるさと
たっぷり滑ってお腹を空かせたら、ゲレンデベースに建つログハウス調の「レストランふるさと」へ。

《レストランふるさと外観。ログハウスの貫禄》
店内は明るいウッド調で、スキー場の食堂というよりカフェの空気感。大きな窓の外には雪化粧した牧場とゲレンデが広がります。

《リニューアルされたばかりでカフェのような店内。》
メニューは但馬牛の御重1,800円を筆頭に、とんかつカレー1,080円、チキンカツ定食1,480円、うどん・そば・ラーメンまで幅広いラインナップ。
さらに要予約で、ステーキセット19,200円やバーベキューセット(並6,980円〜特上9,800円)なんて本気の和牛メニューまで構えています。さすが牧場のレストラン。
そして店内に掛かる手書きの人気メニューランキングがこちら。1位・但馬重、2位・ラーメン、3位・焼肉丼。……はい、1位からいただきましょう。

《人気メニューランキング。表彰台のイラストがかわいい》
但馬牛とは
実食の前に但馬牛の話をさせてください。ちょっと長いです。でも、知ってから食べると美味しさが変わるので。
但馬牛(たじまうし)は、この但馬地方で育まれてきた黒毛和種の血統。凄いのはその“純血”っぷりで、黒毛和種でも県外の牛を交配に用いない閉鎖育種を続けてきた血統集団なんです(園内・但馬牛博物館の展示より)。
「但馬牛と神戸牛って、どっちが上なの?」とよく聞かれますが、答えはシンプル。神戸ビーフは全頭が但馬牛です。
但馬牛として生まれ育った牛のうち、肉質などの厳しい基準をクリアした精鋭だけが「神戸ビーフ」を名乗れる。つまり但馬牛は神戸ビーフの母体そのもの。さらに言えば、但馬牛は、松阪牛や近江牛など各地のブランド牛の素牛や血統改良に用いられ、日本の高級和牛のルーツの一つとなってきました。日本の高級和牛の家系図をさかのぼると、だいたいこの美方郡にたどり着くわけです。
極めつけが名牛・田尻号。昭和14年にこの美方郡で生まれた種雄牛で、現在のすべての但馬牛の共通祖先。日本の黒毛和牛の99.9%が田尻号の血を引くとも言われています。和牛界のビッグバンは、この山あいで起きていたんですね。
こうした歴史は、公園内の但馬牛博物館で江戸時代の絵巻から遺伝子の話までみっちり展示されています。恐ろしいことに無料です。そして、博物館で得た知識をいまドヤ顔で皆さんに語っています(笑)。

《但馬牛博物館の展示。名牛「田尻」号は現在の全但馬牛の共通祖先》
つまり、ここレストランふるさとで食べる但馬牛は、産地直送ならぬ牧場直系。予習はここまで。食べましょう。
但馬牛の御重┃人気No.1にして全人類の正解
まずは人気ランキング1位、但馬牛の御重1,800円(2026年シーズン価格)。

《但馬牛の御重。蓋を開けた瞬間の景色がこれ》
お重にタレ焼きの但馬牛がご飯を覆い尽くしてぎっしり。中央に青ネギ、脇にはサラダとみそ汁とお漬物。蓋を開けた瞬間に甘辛い香りがぶわっと立ちのぼって、この時点で優勝が確定します。

《ついつい香りを確かめちゃうよね》
肉は薄切りなのに一枚一枚に存在感があって、噛むと和牛の脂の甘みがじゅわっと広がる。
肉の味を邪魔しない御重用のタレ。赤身の旨みと脂のバランスが絶妙。

《焼き加減も完璧♪》
本場の但馬牛の御重が、サラダ・みそ汁付きで1,800円。都会の和牛ランチの相場を知っていると二度見する価格です。
これが牧場ふもとの実力か……。
但馬牛の焼肉定食┃自分で焼くという贅沢
さらには但馬牛の焼肉定食2,880円(2026年シーズン価格)もいただきました。

《但馬牛の焼肉定食。まず、この生肉の美しさを見てほしい》

《もちろんフルセットです!》
こちらはなんと、サシの入った但馬牛のスライスが生の状態で登場。エノキやもやしなどの野菜と一緒に、卓上の陶板でじゅうじゅう焼いていくスタイルです。

《陶板の上でじゅうじゅう。この瞬間のために生きている》
自分のペースで、好みの焼き加減にできるのがこのスタイルの贅沢なところ。軽く炙ってレア気味でいくと、但馬牛のきめ細かい脂の甘さがダイレクトに来ます。それを特製ダレにくぐらせて、白ご飯の上へ。

《特製ダレにダイブ》
はい優勝。本日2度目の優勝です。
焼肉丼┃御重の兄弟分
人気ランキング3位の焼肉丼1,600円(2026年シーズン価格)。

《焼肉丼。タレの照りが暴力的》
位置づけとしては御重の兄弟分、味付け違いのバリエーションといったところ。
丼には千切りキャベツが敷かれていて、タレをまとった但馬牛と一緒にかきこむと、シャキシャキ食感がいいアクセントになります。

《焼肉系なのでがっついても許される!》
御重よりカジュアルに但馬牛を浴びたい日はこちらですね。
但馬天津チャーハン┃コスパ枠のダークホース
締めの変化球は、但馬天津チャーハン880円(2026年シーズン価格)。

《但馬天津チャーハン。卵による完全被覆》
チャーハンの上に、ふわとろ卵が羽毛布団のように完全被覆。れんげを入れると卵の下から具沢山のチャーハンが顔を出します。

《但馬牛要素はここ!!》
但馬牛メニューのなかでは一番リーズナブルに但馬牛を味わえるコスパ枠。焼肉系の合間に挟む優しい味わいで、但馬牛フルコースの完璧なローテーションです!

《とろとろ卵のアップ。伝われ》
ちなみに冬季限定の但馬牛鍋焼きうどん(平日5食限定)なんて隠し玉もあるそうです。平日5食は争奪戦必至。次回の宿題ですね。
最後に:滑って、食べて、学んで、触れ合って
食後は腹ごなしに園内をお散歩。但馬牛博物館では、江戸時代の牛の絵巻から但馬牛の遺伝子の話、名牛たちの記録まで、和牛愛の詰まった展示をじっくり見学できます(何度でも言いますが入館無料です)。
すぐ近くの牛舎では、本物の但馬牛がのんびり干し草を食んでいました。さっきまで但馬牛を食べていた身としては複雑な気持ちに……なるかと思いきや、「ありがとう、美味しかったよ」と自然に感謝の気持ちが湧いてきます。

《牛舎の但馬牛さん。このつぶらな瞳である》
動物舎にはモルモットやヤギたちもいて、ふれあい体験も楽しめます。雪遊びデビューの子供連れにも最高の環境ですね。
というわけで但馬牧場公園スキー場。貸切パウダーを滑って、和牛をお腹いっぱい食べて、博物館で学んで、本物の但馬牛にごあいさつ——これだけ遊び倒して、入園料無料・駐車場無料。
かかったのはリフト券と食事代だけです。県立、太っ腹すぎる(本日2回目)。
ゲレンデは雪のある季節だけのお楽しみですが。通年で楽しめる施設です。
ぜひ食べ(遊び)散らかしに来てくださいね。
それじゃまた次のゲレ食で。ごちそうさまでしたっ!
本日のゲレ食レストラン
・店名:レストランふるさと(県立但馬牧場公園スキー場ベース)
・場所:兵庫県美方郡新温泉町丹土1033
・営業時間 :11:00〜(スキー客向けランチは昼過ぎ〜14時頃で終了・木曜定休)
・リフト営業:平日9:00〜16:40/土日祝8:00〜16:40(1日券 平日2,500円・土日祝3,500円)
・公式:スキー場 www.bokujyo.com / 特設サイト https://www.bokujyo.com/winter/information.html / 公園 www.tajimabokujyo.jp
この記事を書いた人

えすぺゆき(北島裕也)
1986年生まれ、東京出身。Snow Scenes Creator。
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メディア出演、SNS活動、動画・写真撮影を通じて雪山やゲレンデの魅力を発信する人。ゲレンデ撮影(追い撮り)のスペシャリスト。雪上での映える撮影とゲレンデの美味しい食事(ゲレ食)をこよなく愛する。
